茅葺屋根の構造はどうなっているの?実は高機能な茅葺屋根の秘密
茅葺屋根の構造はどうなっているの?実は高機能な茅葺屋根の秘密
2024.03.06
古民家などで使われる茅葺屋根は、古くは縄文時代から見られた「最も原始的な屋根」とも言われています。
合掌造りの集落が有名な白川郷や100年以上前に建てられた重要文化財に指定される建物以外に、現代ではほとんど目にする機会がありません。
茅葺屋根は昔の日本家屋に使われているというイメージが強いかと思いますが、実は日本だけでなく世界中で見つかっています。
実際、韓国の民家やバリ島などの熱帯地域の住まいや店に利用されている写真や現物を見たことがある人も多いのではないでしょうか?
あの藁のように見えるものがどうやって屋根として機能しているのか、不思議に思うことはありませんか?
そこで今回の記事では、茅葺き屋根の特徴や構造について中心に解説、紹介してまいります。
どうぞ最後までご覧いただき、参考にしていただければと思います。
茅葺屋根とは?
茅葺き屋根とは瓦屋根が伝来するまで住宅の屋根として広まっていたもので、その名の通り「茅(かや)」を材料として葺いた屋根の事を言います。
「茅」とはススキやチガヤ、ヨシ、スゲ、葦(あし)等の植物の総称です。
「茅」として使われるものの条件としては、その地で簡単に確保でき濡れても腐りにくいこと。そして形状は細くて長い、硬くてしなやかであることが茅葺き屋根として使うのに望ましいと言われて、主にイネ科の多年草が使われます。藁や麻の茎も補助的に使われます。
現在も何百年も前から続いている茅場が残っているところも多く、地元の人が毎年刈り入れや火入れ等をして管理しているようです。
茅葺屋根の構造はどうなっているの?
「茅葺屋根はなぜ雨漏りしないの?」という多くの疑問にお答えするために、茅葺き屋根の構造について簡単に説明します。
茅葺屋根は材料を棒状に束ねたものを、押さえ竹(押し木)で挟み込んで葺き上がらせていきます。勾配をつけた片流れになるよう何層にも葺いて厚みを増します。
この時、茅を強く挟み込めば込む程、丈夫で水漏れがしにくく長持ちする屋根になり、そのためには膨大な量の茅を使用することになります。
細くて長い茅が望ましいと先述しましたが、それは茅が短いと押さえ竹を設置する数が多くなり、茅が抜けやすくなるためです。
棒状の束ということは隙間が必ず出来るため、そこから雨漏りするのでは?と考えられますが、実はこの隙間が導水効果を発揮して表面だけに水が流れ浸水を防ぐことが出来ているのです。まさに「雨仕舞」ですね。
実際、年月が経って茅の形状が崩れ隙間が埋まってしまうと導水効果が弱くなり雨漏りを起こすようになるので不思議ですよね。
ただこれには諸説あり、厚く葺かれていることで単純に下まで浸み込むのに時間がかかる、雨で濡れることで茅が膨張して隙間を防ぐ、囲炉裏の煙が茅について防水効果が出る等も言われています。
茅葺屋根が涼しい理由
高温多湿な気候である日本の夏にも茅葺屋根は最適な構造となっています。
夏の強い日差しに照らされた茅は乾燥しますが、水分が蒸発すると同時に気化熱として熱を取り去ってくれる性質があり優れた吸湿材となるのです。
そのため、自然な素材であるにも関わらず結露やカビが発生しにくく建物が長持ちするのです。
現代の住宅の屋根に使われているトタンや瓦ではこのようなことは出来ず、逆にかなりの高温になってしまいますよね。
また、保温性も高いため夏だけでなく冬も快適に生活が送れるように作られています。
茅葺屋根のメリット・デメリット
上記のように茅葺屋根は吸湿性、保温性、通気性、断熱性といった機能面でのメリットが多くありますが、他にも茅葺屋根は天井が高いという特徴があり、屋根裏のスペースを有効活用することが可能で、昔は屋根裏に農機具を収納することが多かったようです。天窓が付いているものもありますね。
一方で茅葺のデメリットもあり、最大のデメリットは「燃えやすい」ということでしょう。
一度火事になると途中で鎮火させることはほぼ不可能で、結果として全焼してしまい被害が大きくなるケースが多いのです。
他にも台風の強風で吹き飛ばされやすかったり、雪の重みや地震で倒壊する恐れもあります。
また、現在は茅葺屋根を施工できる技術を持った業者が少なく探すのが難しいこと。そして葺き替えの工事も全て手作業になるため、メンテナンスを行う際のコストが高いという部分もデメリットと言えるでしょう。
茅葺屋根の耐久性は?
植物で作られている屋根ですからすぐに劣化してしまうのではないか?と思われがちですが、実は茅葺屋根は耐久性にも優れています。
一般的に耐用年数は30年以上、茅の中でもヨシを用いた茅葺きの場合、40年以上もつとも言われています。
破損や劣化した際は安心・安全で暮らすために放置せず修理やメンテナンスを行う必要がありますが、方法としては全体を葺き替える「丸葺き」と分割して葺き替える「分割葺き」、傷んでいる箇所だけを補修する「差葺き」の3種類があります。
費用は高く、丸葺きで1000万円~2000万円かかり、その他の方法は500万円が相場になります。
最近は茅葺屋根に金属でカバーするメンテナンス方法が傷みにくく費用を削減できると人気ですが、金属の劣化と共に被害も多く、外観や茅葺屋根の文化を伝えていくという観点からも賛否が分かれています。
新築の住宅にあえて茅葺屋根をつける!
日本では数が少なくなった茅葺屋根ですが、実は今、海外で家を新築や改修をする際にあえて茅葺屋根を選ぶ人が増えているそうです。
特に寒さの厳しい地域において、断熱材やペアガラスといった対策とともに茅葺屋根が選ばれることが多く、更に自然素材を活かした屋根であるため環境にも優しいという点も大きな理由となっています。
まとめ
以上のように、茅葺屋根には昔の人の技と知恵が詰まった素晴らしい産物の一つです。
ただ草を束ねて建物に被せたのではなく、茅の特性を活用し、雨水が内部に浸水するのを防止しして快適に生活するために考えられた構造であることがよく分かりますよね。
日本では施工できる職人が減り茅葺屋根はどんどん姿を消しているのは大変残念ですが、SDGsやエコが叫ばれている今は、改めて茅葺屋根が持つ良い部分を考えるのに良い時なのではないでしょうか。
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