曳家(ひきや)とは?利用するメリットや手順について紹介します - 古民家再生 丹保建設 富山県南砺市 金沢市

曳家(ひきや)とは?利用するメリットや手順について紹介します

曳家(ひきや)とは?利用するメリットや手順について紹介します

2024.03.06

曳家(ひきや)とは?

「曳家(ひきや)」とは、家やビル等の建築物や橋、樹木等の重量物を解体せずにそのまま移動させる建築工法です。
今は引っ張る、引きずるという言葉には「引く」という漢字が一般的に使われていますが、綱などをつけてひっぱる、後ろにつけたまま進むということを表す時には「曳く」という漢字が使われ、そこから「家を曳く」という意味で「曳家」となっています。
また、曳家の歴史は古く、5000年前の古代エジプト文明では「テコ」と「コロ」の原理を応用して建造物が造られていた時代から技術の開発や向上をさせながら受け継がれてきているのです。

曳家が利用される主な場面

曳家はさまざまな目的や場所で活躍しています。その中で主な工事を以下に紹介します。
<公共工事>
道路拡張、区画整理、歴史的な遺産・重要文化財の保存、巨木・巨石の移動
<災害工事>
津波・浸水被害対策、地盤沈下、地震・水害の復興
<敷地の有効活用>
駐車場の確保、住宅の増改築、陽当たりの改善、土地の売却

曳家のメリット

建物や重量物を移動させるために曳家を活用するとさまざまなメリットがあります。
例えば、
・工事を行っている最中も家の中でこれまで通りの生活を送ることができる
・建物をそのまま移動させることが出来るため荷物の梱包などをすることなく引越しすることが可能
・家を新築するよりも大幅に費用を抑えることができる
・移築工事を行うよりも早く完了させることができる
・廃材が出にくくエコ
・建物の基礎工事を含め工期が約1~2ヶ月程度と短い
・移動に際し基礎の補強や家の傾き、歪みを修正できる
・土地を有効利用できる
・店舗や会社を休まず営業したまま工事ができる
・重要な建築物を傷つけず維持、保管できる
・免震工事も同時に行える

曳家の手順

曳家工事の大まかな手順を紹介します。

1.資材を搬入し現地調査を行う。
2.掘削する。
3.建物と基礎を切り離してジャッキアップする。
4.土台の下に鋼材をセットする。
5.ローラーとレールを引き建物を移動させる。回転させて角度を変えることも可。
6.ローラーとレールを撤去。
7.所定の位置へ移動後、建物をゆっくりと下ろして設置し調整。
8.隙間を充填する。
9.使用した道具を片付けて搬出する。
10.曳家に伴う土工や補修、基礎下地、電気、設備、外構、建具等、状況に応じた工事を行って完了。

曳家の工法には土台の下に鋼材を入れて移動する姿曳移動工法 (下腰工法)、建物と基礎を一緒に移動する基礎共移動工法、鋼材と柱をワイヤーで締結して移動する腰付移動工法 (上腰工法)の3つの種類があり、利用される建物が木造か、鉄筋コンクリートか、戸建てかアパートか神社仏閣か・・・等によって最適な方法を選びます。

曳家を未来に残すために

伝統的な工法である曳家ですが、全国的に需要は少なく仕事も重労働で大変であることから業者の数も多くありません。
そのためあまり社会に認知が広まらず、人材不足や需要の確保、技術の伝承といった業界としての問題があります。
曳家はご紹介してきた通り、一般の方はもちろん公共事業や災害時、重要文化財の保管などの重要な役割も担っており、この技術を失うことは絶対に避けなければなりません。
曳家を絶やさないためにも、曳家を専門で行っている業者に関する情報を広めていく必要があります。