説明 |
S邸を建築するにあたってのテーマは、二世帯住宅で常に問題となるお父様の生活環境と若夫婦の生活環境の違いをうまく取り込んだものにすることでした。
お父様は富山県になじみの深い田舎造りの建築を求め、若夫婦は現代風建築を求めていました。「和+洋」の組み合わせの中で、外観や内部空間のつながりを持ちつつ、各世代の住まいに対する空間デザインを融合させることのひとつの解答として、S邸は設計されました。
外観デザインは、玄関をはさんで、お父様の部分は伝統的な日本建築としながら、若夫婦の部分では板張りのモダン建築となっています。お父様の空間には本格的な床の間と仏間を持った座敷を設け、茶の間は梁をあらわしにした吹抜けに。一方、若夫婦の部分では、傾斜屋根の開放的な吹抜けリビング。この二つを融合させたポイントは、素材の選択にありました。屋根は瓦葺きとして同じ色のものを使用し、外観では木が主材料となり、視覚的に共通性を持たせたことにより融合が可能になりました。
内部デザインは、お父様の空間では日本建築の美としての木種の組み合わせと白木と漆塗りのペーストを主としていますし、若夫婦の部分では、コンクリート・ガラス・珪藻土などのモダン素材をペーストしています。
両者の空間にそれぞれ個性をもたせると同時に、ネオ素材のぶつかり合いの中で、空間デザインの融合を図っています。 |