新築で全館空調を採用するのは危険?メリットとデメリット、注意点について解説 - 古民家再生 丹保建設 富山県南砺市 金沢市

新築で全館空調を採用するのは危険?メリットとデメリット、注意点について解説

新築で全館空調を採用するのは危険?メリットとデメリット、注意点について解説

2024.06.05

新築で家を建てる際、エアコン等の空調設備をどうするか悩まれていませんか?
中でも最近「全館空調」の人気が高く、設置を検討している人も多いのではないでしょうか。
しかし一方で「全館空調にして後悔した」「全館空調はおすすめできない」という意見も多く、実際のところはどうなのか気になりますよね。
そこで今回の記事では、全館空調のメリット・デメリット、新築の建物に採用した場合の注意点について解説します。
ぜひ最後までご覧いただき、全館空調の採用に迷っている方に向け参考にしていただければと思います。

全館空調とは

全館空調とは、冷暖房を使って家中の室温を均一に保つ空調設備です。
全館空調ではない家というのは、各部屋ごとに空調設備を設置して温度を管理し、廊下やトイレ、風呂等の空調設備がついていない場所は夏場や暑く冬場は寒いという状態が一般的です。
しかし家の中で温度差があることでヒートショックを起こす可能性が高くなったり、健康に良くないと言われることが増え、それを防止するために全館空調が浸透してきたようです。
ただ、ビル管法で定められた空気環境の基準は延床面積が3,000㎡以上の非住宅建築物のみが対象となっており、戸建て住宅の空気環境には適用されないため、住まいに対する「全館空調」とひと言で言ってもその定義は実ははっきりと決まっていません。
メーカーによっては呼び名も異なり、何をもって全館空調とするのか、その具体的な数値などは明確化されていないのです。

全館空調と24時間換気は何が違う?

全館空調と混同されやすいものに「24時間換気」というシステムがあります。
24時間換気というのは「換気」によってシックハウス症候群の対策を行う目的があり、一定の室温を保つ目的である全館空調とは違います。
そのため、どちらかを設置すれば良いというわけではありません。

全館空調の種類

全館空調にはいくつかの種類があります。その中でも主な3つの方法とそれぞれの特徴について以下、紹介します。

ダクト式

全館空調で最も多いのがダクトを使用して全室の空調を調整する方法で、小屋裏等にある空調室からダクトをつないで全部屋に配管していきます。
他の方法では空気の流れの設計やファンを追加で付ける必要がありますが、ダクトを利用すればそれらは不要で確実に各部屋に冷暖房を届けることが可能です。

小屋裏冷房と床下暖房

小屋裏冷房と床下暖房をセットで使って室温をコントロールする方法もあります。
夏は小屋裏に設置した空調室から冷気を下ろし、冬は床下に設置した空調室から暖気を送ります。
床暖房は足元からじんわり暖めてくれるので、真冬でも裸足で快適に生活できることが魅力です。
家全体に行き渡るためには空気の流れを考慮した間取りにする必要があり、壁掛けファンやシーリングファン等を活用して経路を設計します。

高断熱・高気密

家の断熱性と気密性を高めることで、エアコンが1台~2台で家全体の冷暖房を賄うことができるようになり、これも全館空調の方法の一つと言ってもよいでしょう。
上記の方法のようにダクトや空調室を設置するための施工が必要ないため、コストを大幅に減らすことが可能です。
断熱性が低いと、せっかく快適な温度にしても外に逃げてしまい、温度を維持するため運転を続け多くのエネルギーが必要になり、気密性が低いと今度は外から冷気や暖気が入ってきて計画的換気ができず、結露やカビの原因になることがあります。
全館空調を採用するなら、省エネという意味でも高断熱、高気密の家にすることが大切です。

新築の家に全館空調を採用するメリット

それでは新築の際に全館空調を採用するメリットを紹介します。

一年中家の中の温度を均一に保つことができる

全館空調を採用することで「夏は暑く冬は寒い」という当たり前のことを家の中で感じずに、一年中快適に過ごすことが可能となります。
立地や地域によりますが、全館空調のない家では夏場2階だけ暑い、夜に寝苦しくて何度も目が覚める、冬場の脱衣所やトイレが寒い、寒くて布団から出られないといったことは日本の家の「あるある」ですよね。
しかし全館空調にすることでこのような不便さはなくなり、QOLの向上や健康面にも良い影響が期待できます。
また、空調の難しいリビングからの階段や天井までの吹き抜けといった空間も気にせずつくりやすくなる点もメリットでしょう。

綺麗な空気を保つことができる

全館空調は室内の温度調整だけでなく、高性能な換気機能がついていることがよくあります。
空気清浄や除菌機能を持つものにすることで花粉やPM2.5、黄砂を防ぐフィルターがつけられるため、アレルギーを持っている方も安心です。

インテリアがスッキリする

全館空調には市販の冷暖房を使う方法もありますが、多くの場合は壁掛けエアコンや冷暖房機器の露出は少なく抑えられるため、内装がスッキリすること、そして室外機も少なくなるためベランダやバルコニー、エクステリアの部分もスペースが広く取れるようになります。
特に狭い部屋はエアコンを取り付ける場所がなかったり無理矢理設置して圧迫感が生まれることも少なくないため、そのような心配がなくなる点も魅力です。

新築の家に全館空調を採用するデメリット

次に全館空調のデメリットについても紹介します。全館空調による問題やリスクも知ったうえで、採用するかどうか決めましょう。

費用が高い

まず、全館空調の導入には高額な費用がかかります。40坪の家でおおよそ100万~300万円が目安です。
また、選ぶ方式によって専用の空調室をつくる必要があったり、気密性や断熱性を高めた構造にする必要もあるため、新築の際の建築コストも上がります。
また、初期費用だけでなくメンテナンス費やランニングコストもかかることを忘れてはいけません。
点検やフィルター等の部品を交換する頻度と費用、製品の耐用年数などを必ず確認するように注意してください。
ダクト内にほこりやカビ、汚れが溜まってしまうと、そのまま室内に送られることになり、清掃工事には年間で数万円かかります。
また、基本的に全館空調では24時間365日、常に冷暖房が稼働しているわけですから電気代がかかります。
節約したい場合は自分で気軽に掃除や手入れできる型のものを探し選ぶこと、そして設定温度を調整したり太陽光発電を設置するなどの工夫が必要です。

空気が乾燥する

全館空調の家は特に冬場の乾燥を感じやすくなるでしょう。
温度は均一に保たれても、湿度が低いとインフルエンザ等のウイルスに感染しやすくなるため加湿器を合わせて活用することをおすすめします。
ただし、湿度が高くなりすぎると今度はカビやダニや発生しやすくなるため、湿度の調整にも気を付けましょう。

場所ごとに温度調整ができない

全館空調では基本居室ごとに自由に温度設定をすることができないため、同居する家族の中に暑がり、寒がりな人がいる場合は困るかも知れません。
快適な温度というのは人によって異なりますので、モデルハウス等で実際に全館空調を体感し設定温度について説明を受け、家族全員で相談する必要があります。

新築で全館空調を取り入れる時の注意点

全館空調の採用する際には、デメリットの他に注意したい点がいくつかあります。

全館空調が機能しない場合がある

全館空調は、建物の断熱性と気密性が高くないとしっかり機能しません。
目安としては断熱性に関しては断熱グレードG2(Ua値0.46)、気密性に関してはC値1.0㎠/㎡以下、(理想はC値0.5㎠/㎡程度)の性能がほしいです。
そのため、ハウスメーカー、工務店と全館空調の契約を結ぶ前に、これらに適合した施工が可能かどうか確認してみて下さい。

長期的なコストを含めて検討する

全館空調は複雑なシステムを組んでいることもあり、壁に付けるエアコンよりもコストがかかることは既にお伝えしました。
更に詳しく説明すると、設備機器というのは一般的に更新や取り換えのタイミングは15年前後。その時にどれくらいの費用がかかるのか前もって確認することも予算を立てるために重要です。
メーカーによっては長期で保証がつくこともあり、買い換え費用が安いケースもありますので、故障した時の対応やアフターサービスも含めて比較しましょう。

換気機能はしっかりと

全館空調は定期的に窓を開けることも大切ですが、換気システムをしっかり機能させていないと、送風により全館にニオイが充満してしまうことがあります。
料理の他にペットを飼っていたり、たばこを吸う家族がいる場合は特に注意が必要です。
24時間換気は0.5回/h換気できるものを設置し、念のため換気量の測定をしてもらうこともおすすめです。

まとめ

注文住宅など家を新築する際に悩むポイントでもある全館空調には、一年中快適な温度で過ごせるという大きなメリットがある一方で、高いコストや個別での温度調整ができない等さまざまなデメリットもあります。
全館空調を採用する場合には、断熱性や気密性、将来的にかかるコスト、換気機能などのポイントをしっかりと抑え、納得したうえで理想の家づくりを実現させましょう。
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